売買契約の基本

民法の売買契約

 民法では売買契約について、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対して代金を支払うことを約することによってその効力を生ずる(民法555条)とあり、口頭により「この商品を100円で売ります」(売主)という意思表示を「100円で買います」(買主)と意思表示すれば契約が成立します。これを双務契約といい、通常はこの売買契約で何も問題はありません。

 しかし、何らかの理由で契約を解除したくなったり、麻薬の売買など「そんな契約認めていいの?」といったケースもあるでしょう。そもそも意思表示には人間社会においての曖昧さがあるのです。

 また、一定の条件においては救済措置なども必要になるでしょう。

意思表示の無効・取り消し

 意思表示には、実際の意思とは違う意思(意思表示の瑕疵)というものがあります。冗談(心裡留保)、ウソ(虚偽表示)、勘違い(錯誤)、といった本人に起因する瑕疵。詐欺や脅迫といった、自分以外の者の影響による瑕疵は、一定の要件のもと法律で保護されています。 

 また、未成年者などの制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人)として保護されるべき状態にある人も、法律により規定されています。これらの保護とは、契約自体を無効とする、いったん成立した契約を取り消すことができる、といったものであり、契約者双方の利益のバランスが問題となります。

 なお、麻薬の売買や殺人の依頼など、公序良俗に反する法律行為は無効(民法90条)とされ、信義則に反するものや、権利の乱用、明らかな犯罪に当たる行為についても同様と考えられています。

 契約行為の無効や取り消しは、消費者としての日常の生活や、仕事で売買契約に関わる場合などに、大変重要なものとなります。

民法と商法の関連性

 では、日常生活においてお店に牛乳を買いに行ったとしましょう。まず、売主は買主が制限行為能力者でないことを確認しなければ、後から売買契約を取り消されてしまうのでは?と不安になりますが、民法では、日用品の購入その他日常生活に関する行為は、制限行為能力者(未成年者はは別)でも単独で行えるとしています。

 未成年者については保護者の同意が必要ですが、通常代金を支払うことができる状態であれば、保護者が少額のお金を渡す(お小遣い)時点でその消費を同意していると考えるのが普通であるので、そうであれば売主もいちいちお店に来た人に行為能力があるかをチェックする必要性はないでしょう。

 逆のパターンではどうでしょう。

 お店にいる売主が制限行為能力者でないかチェックする必要はあるのでしょうか?

 こちらについては民法第6条に「一種または数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」とあり、この「営業を許された」というのは代理権を授与されたととれます。制限行為能力者を代理人にした場合、代理人がした行為は代理権を授与した本人に帰属するため、未成年者以外の制限行為能力者の場合も、お店で物を売っている以上、お店から売買契約に関して同意を得て、売主を代理していると考えることができます。

 このような状態を商法では次の通り規定しています。

 ・商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう(商法4条1項)

 ・店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者または鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としないものであっても、これを商人とみなす(商法4条2項)

 代理についての規定では、民法と商法(商行為と商人)に違いがあります。

 【民法の代理】 代理人は、本人のためにすることを示す必要がある。(民法99条)本人の死亡により代理権は消滅する。(民法111条1項1号)

 【商法の代理】 本人のためにすることを示さなくても、本人に対して効力を生じる。(商法504条) 本人の死亡によっても代理権は消滅しない。(商法506条)

売買契約の目的物が不良品だったら?

 売買契約後、引き渡しを受けた商品が不良品だった場合はどのような救済措置があるのでしょう?

 まず、このような問題を「契約不適合責任」といい、2020年4月1日の改正民法で対象物が特定物か不特定物かにかかわらず、売主が負う責任が整理されました。

 買主は、引き渡しを受けた商品の種類、品質または数量に関して契約内容に適合しない場合、「契約不適合責任」に基づき次の請求ができます。

 ・修理、代替物または不足分の引き渡し

 ・代金減額

 ・契約解除

 ・損害賠償

 これらの請求は、買主から一定期間中に売主へ通知しなければなりません。

 種類、品質の契約不適合の場合は、不適合を知った時から1年以内に売主に不適合の事実を通知する必要があります。(民法566条)

 お店に並んでいるような商品は、現物を確認して引き渡しを受けるとは思いますが、梱包された商品を開けてみたら中身の数が足りなかったり、破損や汚れ、陳列された商品とは別の物が入っていたなど、多かれ少なかれ皆さんも経験があると思います。

 なお、商法では商人同士の売買の買主に検査と通知の義務を課しています。

 1.受領後遅滞なく、目的物を検査しなければならない。

 2.種類、品質、数量について、契約内容不適合を発見した場合、直ちに通知しなければならない。

 3.2を直ちに発見できない場合でも、6か月以内に通知しなければ追完請求などができなくなる。

 以上、商法526条 

 

 また、マンションや戸建て住宅などの不動産は、普通に生活しているだけでは気づかない欠陥が、後から発見されることもあるでしょう。

 こちらについては、宅地建物取引業法などで事前の説明義務や契約書への記載、売主の瑕疵担保責任の範囲や期間などがより、買主保護に手厚くなっています。

 ただし、宅建業者同士の取引では適用されないことも注意しなければなりません。

 あくまでも消費者保護の観点であるといえるでしょう。

 また、不動産売買の隠れた瑕疵には、物理的な瑕疵のほかに「心理的瑕疵」というものがあり、いわゆる事故物件に関する告知についても配慮されています。

クーリングオフについて

 クーリング・オフについては国民生活センターのHPに記載があるので引用します。

クーリング・オフは、いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。

  • ※2022年6月1日より、書面によるほか、電磁的記録でもクーリング・オフの通知を行うことが可能になりました。電子メールのほか、USBメモリ等の記録媒体や事業者が自社のウェブサイトに設けるクーリング・オフ専用フォーム等により通知を行う場合が挙げられます。FAXを用いたクーリング・オフも可能です。
クーリング・オフ(テーマ別特集)_国民生活センター

まとめ

 売買契約は、単に「物とお金を交換する約束」ではなく、目的物・代金・引渡し・危険負担・契約不適合責任など、法的リスクを整理するための重要な枠組みです。

 特に実務においては、
• 契約成立のタイミング
• 書面化の有無と証拠力
• 契約不適合責任への対応
• 解除・損害賠償の条件設定

 これらを事前に整理しておくことで、紛争予防とリスク管理に直結します。

 売買契約の基本を理解することは、ビジネスの安全性と交渉力を高める武器になる知識です。

 法務リテラシーを高め、契約を「守り」から「戦略」へ。それが、法務bizが目指す実務直結型の学びです。

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