産業廃棄物の収集運搬を行うには許可が必要です。
しかし、実務において「この場合は許可が必要?」と判断に迷うことは多いと思います。
また、許可をとるにはハードルも高いため、規制をよく理解したうえで、ご自身の会社が行う業務が、この規制に掛からないように他社と契約を結ぶ必要があります。
では、実際の例を基に産業廃棄物収集運搬業について見てみましょう。
4社がかかわる事例
材料を仕入れて加工するA製造会社と、そこに材料を納品するB商社の取引事例です。
この材料はとても高価であり、納品する際の運搬にはC警備会社の伴走警備をつけて納品する契約となっています。
B商社はこの高額な材料を納品するにあたり、D倉庫会社に材料の一時保管と納品時の運搬を依頼しました。
さて、ここまでは産業廃棄物について考慮しなくても良いような気がしますが、実務においては見落とせないポイントが実はあるのです。
納品時に使用した木パレットの処分
D倉庫会社はB商社の依頼を受け、納品当日の運搬に必要な車両の手配(10tトラック)をし、B商社が別に依頼したC警備会社と当日の打ち合わせを行いました。
材料である貨物は10パレットあり、車両への積み込みと納品時に、C警備会社が貨物に異常がないかを確認すること。
貨物引き渡し後にA製造会社から納品書にサインをもらうこと。などを確認しました。
このC警備会社は普段の取引では小型のトラックで警備輸送を行っており、警備業と運送業の許可を受けている会社でしたので、お互い通常業務の延長として理解し、特に問題なく打ち合わせは終了しました。
しかし、この時点で納品後の木パレットの処分については何も取り決めはされていなかったのです。
納品当日は事前の打ち合わせ通り、無事に貨物は運ばれ、A製造会社のフォークリフトで10tトラックから貨物が降ろされました。
C警備会社はA製造会社の担当者に納品書へのサインを求めたところ、担当者からパレットの処分を依頼されたのです。
A製造会社は貨物を降ろした後、すぐに貨物の外装を外し、木パレットと外装のビニール及びプラスチックのバンドなどをC警備会社の小型トラックまで持ってきました。
そこでC警備会社は次の通り回答し、納品書にサインを貰って帰社しました。
①小型のトラックなのでパレット10枚全部の持ち帰りは無理。残りは次回予定されている納品の時に持ち帰るので、今回は7枚持ち帰る。
②外装のビニールなどについては全て持ち帰る。
③パレットの処分費などについては帰社後に依頼主のB商社を含めて確認するので改めて相談させてほしい。
本事例のポイント
今回の事例では、C警備会社が産業廃棄物収集運搬業の無許可営業にあたるかどうかが問題です。ポイント毎にみてみましょう。
まず、木パレットの扱いですが、平成20年4月の廃棄物処理法の改正により、事業系一般廃棄物から「産業廃棄物」へと区分が変わっており、運送時に使用した木パレットの処分は産業廃棄物と明記されていますので注意しましょう。
使用済みの外装のビニールやPPバンドも産業廃棄物です。再利用する意思がなく、処分を決めた時点で廃棄物となります。
次に、この木パレットが誰の所有なのかという問題です。
というのも、この収集運搬業では「自らが排出した廃棄物を自らが運搬する」いわゆる自社運搬は許可不要だからです。
※産廃を自社運搬する場合には別のルール(廃棄物処理法施行規則)がありますがここでは割愛します。
今回のケースの場合、木パレット及び外装の梱包資材は、材料納品のために使用したものですので、A製造会社が、受け取り時に持ち帰りの意思表示をした時点で、A製造会社所有のものとはいえず、持ち帰らなかった分のパレットも含めて残りの3社のいずれかの所有物であると考えられます。
一般的に、B商社が材料の保管と運搬をD倉庫会社に依頼した時点で、何らかの取り決めがされていると思われますが、少なくともC警備会社はこの廃棄物に関して所有者とみるには一番遠いところにいると考えられますので、自社運搬にはあたらないでしょう。
結論から言って、C警備会社は今回の木パレット及び外装材の運搬については、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要なケースであったと思われます。
この、「知らない間に他人の廃棄物を運んでいた」というのが廃棄物処理法違反の一番気を付けないといけないポイントです。
なお、廃棄物処理法では、「建設工事現場で発生した建設廃棄物の排出者は、常に元請業者であり、下請け業者がその立場で工事を行った際に出た建設廃棄物を、建設工事現場外に運搬する場合は、運搬先がどこであるかに関わらず元請け会社の産廃を運んだことになる」としています。
下請会社の廃棄物でも、元請会社の廃棄物を運ぶものとして収集運搬の許可が必要と明記されているのです。
今回のケースにおいても、「納品現場で発生した廃棄物」の排出者は元請けであるB商社とするのが一番自然だと思われます。
なお、再利用の可能性があるパレットを運搬する分には許可は必要ありませんが、処分が決まった時点で廃棄物ですので注意してください。
罰則について
産業廃棄物収集運搬業の許可を得ないで行った廃棄物処理法違反の罰則は、
・行為者(従業員)に5年以下の拘留もしくは1,000万円以下の罰金またはこれの併科
・下請け業者(無許可営業)無許可で収集運搬を受託した 3億円以下の罰金
・元請け業者(委託基準違反)無許可業者に産廃の収集運搬を委託した 1,000万円以下の罰金
まとめ
実際のケースでは、C警備会社は持ち帰ったパレット及び梱包資材を、自社の産廃として一時保管し、産廃業者(許可あり)に処分を依頼しています。
どの時点で「自社の産廃」としているのか、その根拠についても甚だ疑問ではありますが、C警備会社には今回のケースが無許可営業にあたるという認識は無いようです。
実務では、取引先との関係であまり突っ込んだ話ができず、仕事の依頼が無くなることを恐れて問題提起できないこともあるかもしれません。しかし、問題が発覚して罰則や行政処分などのペナルティーが科せられてからでは遅いのです。
納品現場でのパレット持ち帰りは運送業界では当たり前のこととして習慣化されています。
多くはパレットのリサイクルや、まだ処分することが決まっていないものとして持ち帰り、貨物の積み込みを行う倉庫などが保管してから、必要に応じて処分業者に引き取ってもらっています。
今回のケースも、納品現場で排出されたものについて事前に確認することはもちろん、現場だけで判断しようとせず、その都度関係各社に確認することが意識づけされていれば、後から相談しづらくなることも減るでしょうし、実際に運搬したトラック(10t)が、D倉庫会社の排出物として持ち帰り、倉庫に置いてくれば問題なかったのでは?と思われます。
廃棄物処理法には、「廃棄物を排出した人は、その廃棄物が生活環境の保全上問題がないレベルに適正処理されるまで、その責任を免れることはできない。」としています。この基本理念に沿った運用が求められているのです。
