行政法18日目③損失補償

これで一旦行政法は終了。

復習しつつ行政法のまとめと復習をしたいと思います。

損失補償

損失補償は、適法な行政活動によって国民に損失が発生した場合に、損失補償請求により救済される制度です。

【憲法29条3項】 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。

定義:適法な行政活動によって発生した個人の財産上の損失を公費で補うことにより、損失の公平な分担を図る制度。

一般法:なし

損失補償の要件:特定の者に対して、公共の利益のための「特別の犠牲」が課すものであるかどうかが基準とされる「特別犠牲説」。「特別の犠牲」というためには、その損失が個別的であって、その損失が財産権の本質的内容を侵害するほど重大であることを要する。

損失補償の範囲:憲法29条3項は、損失補償の内容として、「正当な補償」を要することを規定する。「正当な補償」の範囲について、判例には、相当な補償でよいとしたもの(自作農創設特別措置法事件:最大判昭28.12.23)や、完全な補償でなければならないとしたもの(土地収用法事件:最判昭48.10.18)がある。

その当時の経済状態において成立することを考えられる価格に基づき、合理的に算出された相当な額=相当な補償

収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償=完全な補償

損失補償の方法:損失補償の方法については、原則として金銭補償の方法によるが、個別法により替地などの現物補償が認められることがある。

第三者への補償:損失補償は、原則として財産を収用された者に対して行われるが、個別法によりそれ以外の者の第三者にも補償されることがある。

損失補償に関する判例

【損失補償】

・個別の法令が補償規定をおいていない場合であっても、憲法29条3項を直接根拠にして補償請求をする余地がある(河川附近地制限令事件:最大判昭43.11.27)。 ※Xらは、昭和32年以来、名取川の堤外民有地(河川沿いの私有地)を賃借しており、相当の資本を投入して、砂利採取業を営んでいた。その後、昭和34年の宮城県の告示により、河川付近地制限令の規制対象となる「河川付近地」が指定され、そこで砂利採取等を行う場合は、知事の許可が必要となった。Xらは、昭和35年、宮城県知事の許可を得ないで、名取川の堤外民有地で、数度にわたり、砂利採取行為等をしたとして、河川付近地制限令4条2号違反で提訴された。→本件財産上の犠牲は、公共のために必要な制限によるものとはいえ、単に一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものとみる余地が全くないわけではない。河川附近地制限令の定めるところにより損失補償をすべきものとしていることとの均衡からいって、Xらの被った現実の損失については、その補償を請求することができるものと解する余地がある。したがって、かりに被告人に損失があったとしても補償することを要しないとした原判決の説示は妥当とはいえない。しかし、同令4条2号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといつて、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件Xらも、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではない。

・都市計画法に基づく長期の土地利用制限について、特別の犠牲を課せられたものということは困難であり、憲法29条3項を根拠とする損失補償を認めなかった(最判平17.11.1)。 ※都市計画区域内の土地に建築制限があるけれど、都道府県知事の許可があれば建物を建てたり土地を処分することは可能なら、その土地に建築制限を超える建物を建てられない損失について、共有持分権者(土地の共有者)が直接憲法29条3項を根拠に損失補償することはできない。

・災害防止のために財産権を制限する場合において、憲法29条3項の損失補償は不要であるとされた(奈良県ため池条例事件:最大判昭38.6.26)。 ※ため池の破損、決かいの原因になる池の堤とう(池の周囲の土地)の使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていないもので、憲法、民法が保障する財産権の行使には含まれないので、これらの行為を条例で禁止、処罰しても、憲法、法律に抵触、逸脱しないから奈良県ため池条例は、憲法に違反しない(合憲)。なので損失補償も不要とされた。

・都有行政財産の目的外使用許可の撤回の場合、都有行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において消滅すべきものといえ、原則として損失補償は不要であるとされた(最判昭49.2.5)。 ※(使用許可の取り消しが損失補償の対象になるのは)使用権者が使用許可を受ける際に、使用料(対価)の支払いをしたけど、払った使用料と実際の使用期間が釣り合う前に使用許可が取り消されたとか、使用許可をする際に特別な取り決めがあるなど、行政財産(土地)について本来の用途や目的上の必要があるにもかかわらず、使用権者がその土地の使用権を引き続き保有する実質的な理由があると認められる特別な事情が存在する場合に限られるから。

・市の地下道設置のために危険物(ガソリンタンク)の移転を余儀なくされたことによる損失について、損失補償は不要であるとされた(ガソリンタンク事件:最判昭58.2.18) ※道路法70条1項の損失補償の対象は、道路工事で土地の形が変わったことが原因で発生した隣の土地の障害を取り除くために、やむをえない必要があってした通路、みぞ(溝)、かき(垣)、さく(柵)などの新築、増築、修繕、移転や、切土や盛土の工事による損失に限られるので、道路工事の結果、危険物(ガソリン)の保管場所について警察法規に違反する状態になって、危険物の保持者が基準に適合するように工作物(ガソリンタンク)の移転を余儀なくされたことで被った損失は、道路法の損失補償の対象にはならない。警察法規が、一定の危険物(ガソリン)の保管場所について、保安物件(地下の横断歩道)との間に一定の距離を保つという基準を定めている場合に、道路工事の結果、警察法規に違反する状態になり、危険物保持者が基準に適合するように工作物(ガソリンタンク)の移転を余儀なくされて、損失を被ったとしても、それは道路工事によって警察規制に基づく損失がたまたま現実化したもので、このような損失は、道路法70条1項の損失補償の対象には該当しないから。

・貝塚、古戦場、関跡などにみられるような、主としてそれによって国の歴史を理解し住時の生活、文化等を知り得るという意味での歴史的、学術的な価値は、特段の事情のない限り、当該土地の不動産としての経済的、財産的価値を何ら高めるものではなく、その市場価格の形成に影響を与えることはないというべきであって、このような意味での文化財的価値なるものは、それ自体経済的評価になじまないものとして、土地収用法上損失補償の対象とはならない(最判昭63.1.21)。 ※江戸時代初期から、水害から村落を守ってきた輪中提(わじゅうてい:堤防のこと)の文化財的価値は、その敷地の不動産の評価に影響を与えないから、土地収用法に基づく損失補償の対象にならない。

・都市計画法に基づく土地の収用において、収用裁決を受けた被収用者に対する土地収用法による補償額は、被収用地が建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいう。すなわち、当該都市計画事業のため当該土地に課せられた建築制限を斟酌(しんしゃく)してはならない(最判昭48.10.18)。 ※建築制限を考慮すると土地の評価は低くなり、補償金額も安くなるから建築制限を斟酌してはならない

【補償の時期】

損失補償が財産の供与と交換的に同時に履行されるべきことについては、憲法が保障するところではない(最大判昭24.7.13)。 ※憲法は「正当な補償」と規定しているだけであって、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供与と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと言わなければならない。

【収用目的の消滅】

・私有財産の収用が正当な補償の下に行われた場合、その後に収用目的が消滅したときでも、これを被収用者に返還する必要はない(最大判昭46.1.20)。 ※「しかし、収用が行なわれた後当該収用物件につきその収用目的となつた公共の用に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、なお、国にこれを保有させ、その処置を原則として国の裁量にまかせるべきであるとする合理的理由はない。したがつて、このような場合には、被収用者にこれを回復する権利を保障する措置をとることが立法政策上当を得たものというべく、法八〇条の買収農地売払制度も右の趣旨で設けられたものと解すべきである。」 つまり、「当然に返還しなければならないわけではないにしろ、被収用者にこれを回復する権利を保障する措置は必要だ」といっている。 う~ん難しいw・・・

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