今日は国家賠償法やります

国家賠償法(1条)
【1条】1 国または公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意または重大な過失があったときは、国または公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
国家賠償法1条の要件
【公権力の行使】
・行政指導(最判昭60.7.16)該当する ※行政指導が行われていることを理由に、建築確認を留保することは違法となる。
・公立学校での教師の教育活動(最判昭62.2.6)該当する ※中学校プール飛び込み指導中の事故
・立法行為(最判昭60.11.21)該当する ※立法行為の不作為は、違憲審査の対象となる。ただし、国会議員は、立法に関して、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべき。
・裁判官がした争訟の裁判(最判昭57.3.12)該当する ※裁判官がした争訟の裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによって当然に国家賠償法1条1項の規定に言う違法な行為であったものとして国の損害賠償責任の問題が生ずるものではなく、この責任が肯定されるためには、当該裁判官が違法または不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする。
・純然たる私経済作用(最判昭36.2.16)該当しない ※「国公立病院が行う医療行為」や「公務員が事務用品を購入する行為」が私経済作用で、民法が適用される。これらの行為は、私人と同等の立場で行い、公権力の行使とは言えないから。
・国家公務員定期健康診断における国嘱託の保健所勤務医師による検診(最判昭57.4.1)該当しない ※レントゲン写真による検診と結果の報告は、医師が一般的にする診断行為なので、特段の事由がなければ、公権力の行使にはならないが、本件の検診と結果の報告に「特段の事由」はないため、本件の検診等は「公権力の行使にあたる公務員の職務上の行為」には該当しないから。(国に、国家賠償法1条1項の損害賠償責任はない)
・勾留患者に対して拘置所職員である医師が行う医療行為(最判平17.12.8)該当する ※拘置所の職員(医師)がした医療行為は、公権力の行使に該当するが、上告人を外部の医療機関に転送すべき義務を怠ったことを理由とする国家賠償請求は、認められなかった。
【公務員】
・国家公務員法および地方公務員法上の公務員である必要はない。
・公務を委託された民間人でも該当する。
・加害行為および加害公務員の厳格な特定の必要はない。
・指定確認検査機関が行った建築確認(最判平17.6.24)該当する ※指定確認検査機関(民間)の建築確認に関する事務は、建築主事の建築確認に関する事務の場合と同様に、地方公共団体の事務で、その事務を担当するのは、その建築物に建築確認をする権限のある建築主事が置かれた地方公共団体だから。
・社会福祉法人が設置運営する児童養護施設に入所した児童に対する施設職員等による養護監護行為(最判平19.1.25)該当する ※社会福祉法人の職員が、第三者に損害を与えた場合でも、その職員の行為が「公権力の行使」に該当して、国・公共団体が被害者に対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。よって、職員個人は民法709条に基づく損害賠償責任を負わないし、社会福祉法人の経営者も民法715条に基づく損害賠償責任を負わない。
【職務を行うについて】
・加害行為が客観的に職務執行の外形を備えていれば、当該公務員に職務執行の意思はなくても、職務を行うについてといえる(最判昭31.11.30) ※警察官(巡査)が、他人のお金を奪って自分のものにするという目的で、制服を着て勤務中のふりをして、A(被害者)を尋問した上、犯罪の証拠という理由でAの現金を預かり、さらにAを射殺したときは、国家賠償法1条の「公務員がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合」に該当する。
【違法性】
・スピード違反でパトカーに追跡されていた自動車が第三者に損害を生じさせた場合、パトカーの追跡行為が警察官の職務遂行として認められ、職務目的を遂行する上で不必要であるか、具体的状況において追跡方法が不相当であったときは、違法といえる(最判昭61.2.27) ※パトカーの追跡から逃げた車が起こした事故で第三者が被害を受けた場合に、パトカーの追跡行為が国家賠償法上「違法」に該当するためには、その追跡が現行犯逮捕や職務質問をするうえで不必要だったか、追跡の開始・継続・方法のどれかがふさわしくなかったことが必要となる。
・所得税の更正処分について、当該処分が取消訴訟で一部取消されて処分の違法が確定しており、税務署長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正処分をしたと認めうるような事情がある場合は、違法といえる(最判平5.3.11) ※所得税の更正処分で所得金額が実際より大きくなったことは、主に被上告人(納税義務者)が確定申告書に必要経費を実際より小さく記載して、更正処分を受けるまで訂正しなかったことが原因で、奈良税務署長が職務上の注意義務を果たさず、いい加減に更正処分をしたという事情は認められないから。
・刑事裁判において無罪の判決が確定したからといって、それにより警察の捜査や検察の公訴提起が違法となるわけではない(最判昭53.10.20) ※逮捕・勾留は、その時点で犯罪の疑いについて相当な理由があり、かつ、必要性が認められる限りは適法で、公訴の提起は、検察官が裁判所に裁判をするよう求める意思表示なので、起訴の時点や裁判の手続を進める時点での検察官の心証は、判決が出た時点の裁判官の心証と違い、起訴の時点での証拠や資料を考慮すると、有罪と考えられる疑いがあれば足りるから。
・旧優生保護法の規定に基づいて不妊手術が行われたことを理由とする国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求において、同規定は、憲法13条、14条1項に違反するものであり、同規定の内容は、国民に憲法上保証されている権利を違法に侵害するものであることが明白であったというべきであり、同規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法といえる(最大判令6.7.3)
【行政事件訴訟との関係】
・行政処分が違法であることを理由に国家賠償を請求する場合、あらかじめ当該行政処分について取消しまたは無効確認の判決を得ておく必要はない(最判昭36.4.21)
賠償責任者と求償
賠償責任者:国または公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体が損害賠償責任を負う(1条1項)
・加害公務員自身は賠償責任を負わない
・国家賠償請求訴訟の被告は国または公共団体となる。
・公務員の選任監督者と給与負担者が異なる場合は、いずれに対しても損害賠償請求できる(3条1項)
求償:公務員に故意または重大な過失があったときは、国または公共団体は、その公務員に対して求償権を有する(1条2項)。
・加害公務員に故意がある場合の求償はできる。
・加害公務員に重過失がある場合の求償はできる。
・加害公務員に軽過失しかない場合の求償はできない。
・求償権の範囲は賠償額+利息となる。
・求償後の加害公務員を懲戒することはできる。
なお、複数の公務員が国または公共団体に対して国家賠償法1条2項による求償債務を負う場合、この債務は連帯債務になる(最判令2.7.14)。 ※その公務員たちは、国・公共団体に対する関係でも一体となっているというべきで、損害を受けた人に支払われた損害賠償金の求償債務について、公務員のうち一部の人が無資力で弁済できなくても、国・公共団体と公務員たちとの間では、公務員たちが危険を負担するのが公平だから。
国家賠償法は判例がメインだと思うので判例中心に押さえておく。
